5. 浮遊黒猫と楽団装置
[00:01.84] 『衝動の儘に、
[00:04.24] 深い考えもしない儘に
[00:05.75] 家を飛び出したミリリは、
[00:08.31] 激しい疲労と空腹に襲われながら
[00:11.76] それでも足を前へ前へと動かし続けていた。
[00:16.53] 雨にうたれ、磨り減っていく心に、
[00:20.52] それでも目的だけは
[00:21.85] 見失わないように。
[00:24.79] 薄汚れた格好の少女に、
[00:27.62] 声をかける者はいない』
[00:31.88] 「ふふっ、あたし、
[00:34.98] バカみたいだ――」
[00:55.42] 緩やかな明滅にセカイは廻って
[01:03.52] 少女の視界はいつか
[01:07.15] ブラックアウトを繰り返した
[01:12.10] 朽廃ディテールは嘘
[01:16.34] 絡む脚笑って笑って
[01:20.33] 不格好なダンスに黒猫が欠伸する
[01:29.90] 虚構の羽はいらない
[01:34.06] それは物語を生まない
[01:38.30] 不明確な少女の
[01:41.75] 軌道は儚くも空を蹴った
[01:47.78] 意識の葬列に終止符が穿たれて
[01:55.12] 嗚呼、倒れる手折られる
[01:57.51] 刹那救い上げた腕は
[01:59.90] 幻想か現か不明瞭で――
[02:06.16] 『倒れかけた少女を支えたのは、
[02:08.45] 黒衣を纏った放浪者。
[02:11.37] 無言で手渡されたパンに、
[02:13.76] 少女は飛びつく』
[02:16.32] 「あ、ありがと。貴方は……?」
[02:20.84] ぼやけていたセカイが息を吹き返し
[02:29.16] 箒星は流れてく
[02:32.87] 言い尽くせない願い乗せて
[02:37.38] 猫の楽団は空想
[02:41.91] 置き場所を探して探して
[02:45.88] 蓄積した音に 無意識に依存した
[02:55.45] 感情のない喝采 いつか物語を壊す
[03:03.85] 囃し立てる
[03:05.71] 散々耳元で鳴っていた言葉
[03:11.28] それは終わりへ向けられた
[03:17.41] その誘うような声音
[03:20.59] 足を止めて止められて
[03:22.97] 正気を取り戻す少女
[03:25.36] 音はもう掻き消えていた――
[03:32.54] 「あ、あたしの顔に何かついてますか?」
[03:38.29] 『汚れているのだろうか、
[03:40.41] と不安に襲われた少女が口元を
[03:43.87] ゴシゴシと擦っていると彼は微笑み、
[03:47.84] 自分の探している女の子のことを思い出したのだと優しく語る。
[03:53.25] 年の頃も同じで、
[03:55.37] 思わず手を差し
[03:56.07] 伸べてしまったのだと。
[03:59.16] 多くは語らなかったけれど、
[04:01.81] 人として誤った道を 選んでしまったらしいその子を 止めようと 旅をしていることはわかった』
[04:11.29] 鮮やかな感情に呼吸を整えて
[04:18.91] 虚構の羽はいらない
[04:23.16] それは物語を生まない
[04:27.41] 羽はなくとも
[04:29.28] 少女の足取りはその意思を取り戻した
[04:36.81] 飛ぶようにだなんて言えないけれど
[04:43.19] 確かに
[04:44.25] 嗚呼、噛み締めて踏みしめて
[04:46.38] 着実にその地を蹴る
[04:48.77] 少女のいるべき方角へ――
[04:56.47] 「キミの旅の終着点はどこ?
[04:59.46] 決して道を間違ってはいけない。
[05:02.40] 戻れなくなるから」
[05:05.68] 『ぶっきらぼうに、
[05:07.28] けれど誠実に語る彼に少女は頷き、
[05:10.98] 再び歩き始める。
[05:13.29] 二人の目指す場所が
[05:14.88] 同一であることには、
[05:16.93] 最後まで気付かないままに』
[05:21.44] 「もうすぐ行くから……だから。
[05:25.32] 生きて――待ってて」
